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第二回イントラリンクスカンファレンス Recap: 「LP投資業務やファンド管理における現状と今後について」のサマリー

LP-GP間の対面でのコミュニケーションの重要性は変わることはないが、将来的にはシステムがより取り入れられる方向性になるのではないか、との認識で意見が一致しました。

イントラリンクスでは2019年11月12日に赤坂プリンス クラシックハウスにて、第二回イントラリンクスカンファレンス「2019 PE Fund Front Line」を開催し、PEファンドから60名のクライアント様にご参加いただきました。

当日は二部構成のプログラムで、前半ではまず、エー・アイ・キャピタル株式会社 代表取締役社長 佐村 礼二郎 様に「LP投資業務とは何?-GPが知らない世界-」をテーマにご講演いただきました。続いて、インテグラル株式会社 コントローラー&ディレクター 澄川 恭章 様、ユニゾン・キャピタル株式会社 パートナー 山口 仁 様、エー・アイ・キャピタル株式会社代表取締役社長 佐村 礼二郎 様にご登壇いただき、イントラリンクス カントリーマネージャー 村岡 聡がモデレーターとなり、「ファンド管理における今とこれから」についてパネルディスカッションを行いました。その後、村岡より「イントラリンクス 2020年 LP調査レポート」のご紹介をさせていただきました。

後半ではお食事やお飲み物をお楽しみいただきながら、ご参加者同士の歓談のお時間を設けさせていただきました。

 

佐村様ご講演サマリー

PE-2

LPは一体何を気にしているのか?

  • いろいろなステークホルダー(リスク管理部門・コンプラ・当局・お客様・株主)に対する説明責任の重要性が増している。ルックスルー(すべての情報を把握する)をしたがるステークホルダーもいる。

  • GPからの情報は究極のインサイダー情報と認識している。GPは情報の重要性についてはLPにしっかり伝えたほうがいい。

LPは一体どんな業務をやっているのか?

  • デューデリジェンス(DD)で求められる質や量は格段に上がっている。

  • GPのオペレーションがしっかりしているかをきっちり見るようになっている。アメリカのコンサルだとインベストメントとオペレーションそれぞれのDDをやる部隊がいる。

  • ミドルバックオフィスで最近厳しくなっているのがAML(Anti-Money Laundering、 マネーロンダリング防止)。反社データベースでチェックしている。KYC(Know your customer、顧客の身元確認)もしっかりやっている。

  • 300数十ファンドを管理しているので、毎日GPから50通メールがくる。メールの分類をするだけで大変なので、最近分類をするためのRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入した。

LPにとって、どういうGPがありがたいか?

  • ワンストップソリューション=この人に聞けば何でも答えてくれる、という人。

  • クイックレスポンスをくれる人。本当に必要か、何のために必要かLPに聞いてもいいと思う。その上で必要ならすぐにレスポンスする。

  • 期限を守る人。

  • タイムリーな情報提供をしてくれる人。最悪なのはキーマンが辞めるなどの重要情報を外部から聞くこと。

 

レポーティングについて

  • すべて同じ場所にレポートがあれば便利。それぞれのGPでログインPWの管理をして、定期的に変更したりしないといけないので大変だ。

  • すべて同じ形式のレポートだといいと思う。LPはGPからもらったレポートを自分のフォーマットに置き換えないといけないから。

  • 自動的にレポートが流れてくれればありがたい。例えばイントラリンクスの中に全部あれば便利。GP同士で情報交換して、ベストな形式を追求・共有してもらえるといいと思う。LPはそれぞれ意見を持っていると思うので、どういう形式がベターか聞いてもいいと思う。こういう意見はミドルバックの人が持っているので、彼らとコミュケーションできるといいかもしれない。

LP投資業務のこれから

  • 規制強化の流れが激しくなっている。これに対応するコストは増加することはあっても減少することはない。この数年間でも相当気にしないといけないことが増えてきた。

  • ESG(責任投資)はどういうポリシーがあるのか聞くようにしている。

  • 時価会計は一般的になってきているのでしっかりやっていく。海外のケースだと時価会計をさらに説得力のあるものにするために、バリュエーションエージェントなどを入れて、第三者を通しているところもある。

  • いずれにしてもいろいろなコストが上乗せされている。LPにとってこのコストは仕方のないものかもしれないが、一番大事なのはリスクコントロールしながらリターンを上げていくこと。レポーティングなどはGPの協力やイントラリンクスなどを利用しながら効率化を図っていくのがいいのかなと思う。

  • LP視点のエコシステムを考えたときに、専門性のある人材や、インフラ的なものに関してはシステムやサービスプロバイダーが充実してほしい。不足しているのはインフラ・システムの部分。いまだにエクセルで管理したりしているので、今後PEが成長していくためにはインフラの部分は意外と重要ではないかと思う。

 

パネルディスカッションサマリー

PE-3

オペレーションの透明性に関する要求、圧力を感じますか?

澄川氏;

  • 反社などの情報に関しては最近質問が多い。

  • 年金基金様などから情報をひとつに蓄積するようなデータルームを使ってくれないかというリクエストは3年前くらいからあった。

山口氏:

  • 透明性については海外の機関投資家に鍛えられた。社内のオペレーションマニュアル・フローチャートを作って、外部に説明できる文書を作ることを要求されてきた。

  • ユニゾンは元々海外比率が高かったので、2008年くらいから時価評価をしている。3-4年前まではGPとして考えている時価評価です、ということで根拠やマルチプルは示し、以上ですといった感じだったが、近年はどういうDCFモデルなのか、どういうマルチプルを使っているのかエクセルで出してほしいなど、LPが自分でチェックできるレベル感で情報提供をリクエストされることもある。

  • LPからファンドのパフォーマンスに関してグロスとネットの差を小さくするのを常に要求されている。最近特徴的なのがファンドの経費の負担の仕方。投資額に対してどれくらいチャージされているのか、LPが厳しくウォッチしているのを感じる。

佐村氏:

  • 透明性=ガバナナンスの話。GPも金融機関並みのガバナンスを求められているのではないか。ガバナンスをどこまで落としていくか、ある程度GPも組織化されていくのかもしれない。どんどんinstitutional化されてきていると感じる。そうでないと機関投資家からお金が入ってこない。

できるだけ早くLPの要求にキャッチアップするにはどうしたらいいか

山口氏:

  • 人材不足なのでできるだけシステムで業務効率化する。GPの中でコアな判断業務の最終責任をGP側が持つのは大事だが、外注先も多様化して専門性が増していると感じるので、外注先を有効活用しながらクオリティを担保していくのを示せればLPの方にも納得していただけるのではないか。

澄川氏:

  • 2年前にイントラリンクスのシステムを導入して投資家とやり取りしている。投資家にも評判がいい。データのやり取りがスムーズと感じている。イントラリンクスに限らず一番あったシステムを使えばいいのではないか。

  • 一部業務をアウトソースしている。ファンド数が年間10とか15増えることもある。それらを管理するために帳簿は外部に依頼している。

投資家とのコミュニケーションは将来どのように変革すると思いますか?

山口氏:

  • 引き続き対面のコミュニケーションの重要性は変わることがないと思う。イントラリンクスや他社の、日本のGP-LP間のコミュニケーションを効率化するためのデファクトスタンダード争いが激しいが、定量的なデータのやりとりは徹底的に効率化したほうがミスが少ないし透明性も保たれるが、一方で定性的なメッセージのこもった丁寧なやりとりには時間を割いていくべきだしなくならないと思う。

澄川氏:

  • 対面のコミュニケーションは引き続き重要なのは間違いない。システムの利用が進んでいくのも間違いない。システムの中に入れる情報はある程度選んでいるが、今後はシステム上でやり取りしていくことが加速していくのではないかと思う。

佐村氏:

  • テクノロジーが進化しているので、せっかく進化したテクノロジーを使わない手はない。ウェブ上のやり取りは増えていくと思う。アメリカのGPでグローバルに投資家がいると、アニュアルミーティングでしっかり報告、四半期ごとにwebinarなどで情報発信、それを録音していつでも聞けるようにするようなテクノロジーの世界になる。

  • GPは200本コミットしているLPと5本のLPを平等には扱えない。重要な投資家には引き続き対面のコミュニケーションを重視していくのではないか。

オンラインでの情報開示の充実の必要性を感じますか

澄川氏:

  • 2年前にイントラリンクスのシステムを導入したが、どのような情報を載せるか試行錯誤していた。四半期ごとのレポートなど必ず出さなければならないものなどに利用しているが、電話やメールが減ったので事務オペレーションが減った。ある投資家にはこの情報、のようにイントラリンクスのシステムにあげることもできる。投資家とのやりとりの各種情報は一元化していくのではないか。

  • 最初はコスト面でイントラリンクスではないシステムにしようと思っていたが、地方銀行でそのシステムが使えないなどあり、イントラリンクスにした。情報のやり取りをメールでやるのが煩雑すぎてシステムに切り替えたが、現状では非常にうまくいっている。将来的にはシステムがより取り入れられる方向性になるのではないか。

山口氏:

  • オンラインプラットフォームで一元管理して、決算書や四半期ごとのパフォーマンスなどを効率的にやりとりして、一か所に見に行けば必要な情報が集まっているという状況は効率的だと思うので、活用していく。一方で、銀行などの行内のセキュリティレベルが高すぎてシステムが導入できないのでメールや郵送でほしい、というクライアントに対して、大丈夫だよということを示して安心度・認知度を上げていってもらえると、プラットフォームとしての力を発揮できるのではないか。

 

講演・パネルディスカッションを振り返って

今回のイベントは、GPの皆様にLPの方がレポートをどのように活用されているのかを知っていただき、今後のレポーティングに関するオペレーションやLPとのコミュニケーションの改善に役立てていただくこと、また、GP同士のネットワーキングの機会をご提供することを目的に開催しました。

佐村様には基調講演の中で、AML・KYCなどの最近の業界の傾向、RPA導入などの事務作業効率化の現状、LPの立場からのGPのレポーティングオペレーションに関する要望などについて、大変参考になるお話をいただきました。

また、パネルディスカッションでは、オペレーションの透明性や投資家とのコミュニケーションなどをテーマに活発な意見交換が行われ、オンラインでの情報開示の必要性に関しては、イントラリンクスが提供しているファンドレポート向けプラットフォームをご活用いただいている実例についてもお話いただきました。

イベント後のアンケートでは、「講演はもちろんですが、普段は接点のない他のGP様との交流の場は貴重な機会になりました。」「今後もミドル・バックがコミュニケーションできるイベントを続けて頂けると大変うれしく思います。」など、講演・パネルディスカッションだけではなく、ネットワーキングの場としてもご好評いただきました。

イントラリンクスでは今後もクライアント様に、業界の最新情報や知見・ネットワーキングの場をご提供できるようなイベントを開催する予定です。

今回、弊社村岡よりご紹介させていただきました「イントラリンクス 2020年 LP調査レポート」はこちらよりダウンロードしていただけます。

イントラリンクスのファンドレポート向けソリューションについてはこちらをご覧ください。

 

 

Yuki Iwamoto