メタバース:投資がM&A熱を加速
2022/7/1
今週のエピソードでは、ゲームおよび教育分野の投資家が熱意を示すなか、急速な高まりが予想されるアジア太平洋地域におけるメタバースM&A活動について意見を交わします。司会のジュリー=アンナ・ニーダムに加え、香港を拠点とするION AnalyticsのシニアM&Aレポーター、ジェシカ・ウォンさんが参加します。Dealcastは、MergermarketとSS&Cイントラリンクスがお送りします。
このエピソードでは、以下についてご紹介します:
- メタバースとは
- 企業がメタバースに投資する理由
- マイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザード買収の重要性とその他のディールメイキング
- 企業から著名人まで、資金調達と投資の急増
- プライバシーに関する規制上の課題
[トランスクリプト]
[音楽再生] ジュリー=アンナ・ニーダム:MergermarketとSS&Cイントラリンクスが毎週お送りするM&Aポッドキャスト、Dealcastへようこそ。10年間M&Aを取材してきたジャーナリストのジュリー=アンナ・ニーダムです。
このエピソードでは、メタバースについてお話します。今日は、香港を拠点とするシニアM&Aレポーター、ジェシカ・ウォンさんをお迎えしています。
[音楽再生]
こんにちは、ジェシカ。今日は参加していただき、ありがとうございます。
ジェシカ・ウォン:こんにちは、ジュリー=アンナ。お招きありがとうございます。
ジュリー=アンナ・ニーダム:まず最初に、皆さんが知りたがっている、メタバースとは何か説明していただけますか?そう簡単に説明できるものではないかもしれませんが。
ジェシカ・ウォン:分かりました、そうですね、簡単に言えば、インターネットの中に入って、その一部になることができるという構想です。要するにインターネットなんですが、インターネット空間とその中の自分の空間という概念です。
つまり、あなたがインターネットの中にいて、デジタルアバターとして参加しているんです。マーク・ザッカーバーグの定義によると、アバターとは基本的には自分を3次元で表現したものです。今私たちは画面上でお互いを見ています。その代わりに、あなたは別の形で表現された私を見ることができるんです。
例えば、私は画面上で動物として見えるかもしれません。私の顔はカメラに映っている必要はありません。でもアバターは私の表情やしぐさはすべてもっているんです。私たちは基本的に二人とも仮想空間でこの通話に参加することができます。そこでは二人ともアバターで、仮想世界に物理的に存在しているんです。
だから要は私たちの人間らしい個人的な交流がバーチャルに行えます。ですがこの質問への皮肉な答えは [聞き取り不能]まあ、インターネット/サーバースペースのためのニューエイジの業界用語みたいなものです。VRヘッドセットを付けたときにちょっと似ています。簡単に説明するとそういうことです。
私たちはすでに過去2年間メタバースの中で生きているということもできるかもしれません。すでに社会的にも仕事でもオンラインでの交流にあまりにも多くの時間を費やしていますから。基本的に、メタバースの信奉者はこれがインターネットの未来だと言っています。
というのは、画面の後ろにいるのではなく、私たちはみんなこの仮想世界の中にいることになるからです。それがどんな風に見えたとしてもです。
ジュリー=アンナ・ニーダム:私たちは今、バーチャルプラットフォーム上で話していますが、あなたは香港にいて私は英国にいるわけです。メタバースのアプリケーション例をいくつか紹介していただけますか?
ジェシカ・ウォン:はい。最も分かりやすいのはゲームです。個人的には、私はゲームは全くしません。でも、World of Warcraftのようなゲームをする人は私が言っていることが分かると思います。これらのゲームでは実際にキャラクターになることができるのだと思います。
もう一つは、今ちょうどやっているように、例えば、Zoomの通話中なら、あなたはデジタルアバターとして浮かんた状態で参加することができます。メタバースでDJを見ることもできるそうです。メタバースでデジタルコンサートにも行けます。
ヘッドセットを装着するだけで海外旅行ができると言います。インドにも行けます。デジタルアバターに買い物に行かせることもできるそうです。アバターはあなたのために服を試着できます。家にいながらにして、その服がどんなふうか感じることができます。
家や物件を見ることもできます。もう一つは、ヘルスケアです。これは、もちろん、とても人気があります。海外のお医者さんにかかったり、相談したり、遠くにいるお医者さんから、あるいはあなたが遠くにいる場合に治療を受けたりできます。
ですから、生活のすべての面において利用できるということです。ゲームだけではありません。
ジュリー=アンナ・ニーダム:そうですね、特に過去2年間、移動に多くの制限があっただけに、これらのアプリケーションの利点を理解することができるのはとても興味深いですね。
ジェシカ・ウォン:その通りです。それと、人間らしい交流や社会的なつながりが必要なんだと人々が実感しているからでもあると思います。これは画面の後ろではできないと思います。
これはメタバースの支持者の言っていることだと思うのですが、物理的にそこにいなくてもそれを体験できるということです。
ジュリー=アンナ・ニーダム:この分野に関わっている企業を見ると、企業はいつ頃からメタバース構想を追いかけ、投資し始めたんでしょうか?そしてそれはなぜですか?明らかに、パンデミックは他の技術同様にこれを促進したと思われますが。
ジェシカ・ウォン:そうですね、パンデミックはさておき、パンデミックの間、特に昨年、世界中で暗号通貨が勢いを増しました。ビットコインの価格は上昇し、去年の11月に過去最高を記録しました。
みんなが熱狂していました。暗号資産企業はみんな資金調達をしていて、全く正気の沙汰ではありませんでした。みんなが売ったり買ったりしていました。もう一つはNFTです。これは…手短に説明してみます。
要するにNFTとは、もし聞いたことがなかったら、これは非代替性トークン(non-fungible token)のことです。それはいったい何でしょう?これはデジタル権利証といって、要はあなたが何かを所有しているという証明書のようなものです。
例えば、私は家を所有していて、家を所有していることを示す物理的な文書を失くしてしまいました。NFTは、あなたがそれを所有していることを示す証明書になります。
そしてそれは代替不可能、つまり、デジタル証書を他の物と交換することはできないということです。それが提示している物は、異なる物だからです。リザードンのカードと交換できないポケモンカードのようなものです。
ジュリー=アンナ・ニーダム:そうですか。
ジェシカ・ウォン:私はそのように理解しています。要するに、暗号通貨やNFTが、昨年、活発化しました。これでデジタル経済のインフラを構築できるのですが、これはメタバースが本当に有効になるために必要なものです。
ジュリー=アンナ・ニーダム:つまり、今すべての構成要素がそろったわけですね。資金調達について見てみましょうか?資金調達活動はどのぐらい行われていますか、また誰が投資しているのですか?
ジェシカ・ウォン:はい、Crunchbaseによると、去年メタバース関連企業は少なくとも104億ドルを調達しました。これはベンチャーキャピタル(VC)による資金調達です。その前年の調達額は59億ドルでした。これは1年間のメタバース資金調達額としては、過去10年で最高金額です。
誰が投資しているかというと、当然シリコンバレーのVCがいます。VCの実際の創業者もいます。それから個人もいます。思いつくところでは、ルイヴィトンの元最高デジタル責任者など、少なくともLVMHグループですが。
シリコンバレーの大物クリプト投資家、アンドリーセン・ホロウィッツもいます。それからメタバース・エコシステムに進出中で投資したいという企業もいます。彼らはみんなその言葉を使います。彼らはエコシステムという言葉が大好きです。
香港には、Animoca Brandsというゲーム会社があります。直近のラウンドで約50億ドルと評価されています。この会社は少なくとも150社に投資していて、その一部はメタバースだと言っています。ですから、企業、VC、クリプトファンド、そういったところです。
それから、有名人も投資していると思います。
ジュリー=アンナ・ニーダム:この分野で行われたディールをいくつか見ていますが、大きなもの、まずはマイクロソフトとアクティビジョンから始めましょうか?このディールについて少しお話していただけますか?それから他にどんなディールがあったかも教えてください。
ジェシカ・ウォン:はい、アクティビジョンですが、あれは今までで最大のもので、750億ドルもの資金が投入されました。マイクロソフトですから、もちろん、Microsoft Teamsの会議等のメタバース版を作りたいわけです。
マイクロソフトのディールの他に、たくさんのスタートアップ企業がシードラウンドで、かつものすごく高い評価額で資金調達しています。例えば、ポケモンGOに関わっている、サンフランシスコを拠点とするNianticというスタートアップ企業があります。
彼らは去年、3億ドルの資金調達をすると発表しました。これはメタバースを90億ドルと評価しています。もう一つのシードラウンドは、やはり米国企業で、バージニア州を拠点とするHugo Labsというゲーム会社です。このシードラウンドで、4.5億ドルを調達しました。評価額は40億ドルです。
ですから、なんとも常軌を逸している感じです。それからアジアでもいくつか他にあります。オーストラリアでは、NFTゲームのメーカーがあります。彼らはちょうど先月、2億ドルの資金調達で25億ドルと評価されました。テンセントのような人たちがそのラウンドに参加しました。
ベトナムにも、Sky Mavisというゲーム開発会社があります。彼らはAxie InfinityというNFTゲームを出しています。これもスタートアップです。彼らは昨年10月に、30億ドルの評価額で資金調達を行っています。
ですから、なんとも常軌を逸している感じです。それから、非ゲーム会社で買収やM&Aを行っているところも実際にあります。メタバースのゲームに参入するためといったところでしょう。NikeはRTFKTというデジタルスニーカーの会社を買収しました。それが正しい発音かどうかは分かりませんが。
彼らはこのデジタルスニーカーの会社を、メタバースやクリプトコレクティブルズ、NFT分野に参入する手段として買収したわけです。これは12月のことでした。
ジュリー=アンナ・ニーダム:ちょっと待ってください。デジタルスニーカーですか?それは、メタバースの中でだけ履けるシューズなんでしょうか?
ジェシカ・ウォン:そうだと思います。[笑] まず最初に靴を作らないといけないようです。 MetaまたはFacebook、つまりFacebook/Metaみたいです。彼らはグローブを作りました。それをはめると、メタバースの中のものを感じることができます。
デジタルスニーカーもそういうものなんだろうと思います。
ジュリー=アンナ・ニーダム:私はデジタルスニーカーやシューズに、近い将来投資するかどうか分かりませんが。将来に目を向けると、非常にたくさんの異なる要素が登場しているということは、メタバースにおいては明らかにエキサイティングな時代になりますね。業界はどのように進化していくと思いますか?
ジェシカ・ウォン:個人的には、はっきり見定めるのはとても難しいです。というのは、この構想は、単に文字通り10年後に私たちは画面上でお互いを見る代わりにVRヘッドセットを付けてこの通話をしているということになるかもしれません。
あるいは私たちはみんな実際にデジタルアバターになるのかもしれません。けれども、それまでには、よく分かりませんが、私たちは政府がこれを規制した世の中に生きているでしょうし、もっとディールもあるでしょう。そして、メタバースが実現する。
それまでにはもしかしたら、評価額は多少下がっているかもしれません。資金調達もやや下火になっているかもしれません。難しいです。90年代にインターネットが2000年代にどんなふうになるか聞いているようなものだからです。
ジュリー=アンナ・ニーダム:しかし、規制があればあるほど…先ほどの話に戻りますが、マイクロソフト/アクティビジョンのようなディールがありました。それに合わせて、暗号通貨や非代替性トークンがあり、これらがより主流に組み込まれるように規制をどう上手く行うかということがあります。
ですから、より大きく成長する可能性のある分野ということですね。
ジェシカ・ウォン:はい、そう思います。メタバースのような概念に対する主な規制上の課題もプライバシーだと思いますが。これは明らかに、大手テクノロジー企業が今日直面している課題でもあります。
同時に、大手テクノロジー企業はまだやりたいようにやっています。ですから、分かりません。メタバースを怖がる人はたくさんいます。自分のボディーランゲージと顔の表情がこれらの大手企業に記録される可能性があるようなものだからです。
ジュリー=アンナ・ニーダム:面白いですね。道徳的・倫理的な問題が常に生じてきます。
ジェシカ・ウォン:そうですね。
ジュリー=アンナ・ニーダム:ジェシカ、今日はこの辺にしましょう。お話できてとてもよかったです。ありがとうございます。
ジェシカ・ウォン:お招きありがとうございました。
[音楽再生]
ジュリー=アンナ・ニーダム:ジェシカ・ウォンさんでした。今週のMergermarketとSS&CイントラリンクスによるDealcastのエピソードをお聞きいただきありがとうございます。ポッドキャストの評価、レビュー、フォローをお願いします。
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