2020年、LIBORの移行に向けた6つのキーポイント

 2019年、監督庁および中央銀行は、金融機関に対し、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)から移行することを呼びかけるために多くの時間を費やしました。これは各CEOに充てた手紙やガイドライン、フォールバック言語の推進などです。しかし、これらは効果があったのでしょうか?2019年のLIBORの推移を振り返り、また2020年に予想される準備体制強化を踏まえた6つのキーポイントにフォーカスします。


2019/12/19

LIBOR TRANSITION PREDICTIONS

1. LIBOR廃止に向けた対応は、大銀行が小規模な融資会社に先行

より多くの資金と人的関係を持ち、また規制当局との頻繁な接触、新たな法律や金融業界の情勢変化に対応する能力の高い、世界的な大手投資銀行は、一般的に、LIBORからの移行に際して小規模な融資会社に比べて優位な立場にあると言えます。その他の貢献する要素:こうしたグローバル銀行の中には、LIBOR不正操作により巨大な罰金が科されたり、LIBOR廃止に反対したために経済的な結果を被ることになる企業も見られます。最近の調査では70%の投資銀行がLIBORからの移行に向けた準備を行っているとしており、そのうち30%は非常によく準備している、40%は何らかの準備を行っているとしています。

一方で、小規模融資会社の場合、地方銀行やヘッジファンド、事業開発会社を含み、対応が難航しているようです。地方銀行においてはLIBORに代わる指標としての担保付翌日物調達金利(SOFR)は彼らにとって不利になると考えられています。つまり、こうした小企業に対し「自らの借り入れコストが上昇している中で、低い金利で貸し出す」ことを強制されることを意味します。これとは別の小規模融資会社が事業開発会社(BDC)です。これはクローズエンドの投資会社で中小企業や経営が行き詰っている企業に融資を行うものです。Debtwireによる同じ調査では、75%のBDCはLIBOR廃止にあまり対応していないと回答しています。

大銀行に比べ資金が限られている状況において、こうした小規模融資会社の対応ができていないのは理解できるものの、小規模であるからこそ2021年の期限までに機敏で迅速な対応が可能ともいえます。

2. LIBORに関連した契約の90%はデリバティブ

オルタナティブ参照金利委員会(ARRC)のデータによると、アメリカ国内のLIBORに関連する債務200兆ドルのうち、デリバティブ契約によるものは190兆ドルに上るとされています。Debtwireの調査に参加した回答者はデリバティブマーケットにおける最も難しい問題は「キャッシュ商品と金利スワップ間のミスマッチに対応すること」としています。

LIBOR廃止後の取引に関する不透明感はデリバティブ業界に影を落としています。2019年11月、英国の金融安定委員会(FSB)は国際的なデリバティブ業界の団体である国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)に対し、LIBORから切り替わる際に適用されるフォールバック言語の提出を求めることと、LIBORの完全廃止後にフォールバック言語を組み合わせることを要求しました。一方でISDAはもしLIBORが完全廃止となった場合、 クリアリングハウスに対し、「クリアされたデリバティブのすべてのポートフォリオに関して、安全な金利を参照する」確約を求めています。  

デリバティブの他にもLIBOR関連の債権商品は無数に存在し、消費者、機関投資家、個人投資家、またシンジケートローン、住宅ローン、資産担保証券、ローン担保証券に影響しています。またLIBOR関連の発行債36兆ドルが2021年以降に満期を迎えます。

3. 欧州債券市場は非LIBORベンチマークを使用した新しい発行債において他の地域を凌いでいます。

2019年7月現在、274億ポンドの新たな発行債が改定版ポンド翌日物平均金利(SONIA)を使用しています。(インターナショナル・バンカー、2019年12月)LIBORに代替するこの金利は英国内において「変動利付債およびデリバティブ取引において非常に浸透しており使用が増加している」としています。

他方、米国市場における代替ベンチマークとして使用されるSOFRはそれほど浸透していません。これは債券市場においてSOFRを使用した発行債の条約にまつわる不確実性が噂されていること、また「連邦準備銀行にバックアップされたオーバーナイトレポレートを参照する」ことへの疑心暗鬼があるためです。2019年9月にレポレートが高騰した際には逆風となりました。

SOFR にはDebtwireの調査にある通り、良い面と悪い面が見られます。41%の回答者はSOFRがLIBORを上回る点として「深い流動性のある取引」であるとしています。回答者の一人でニューヨークのヘッジファンドのCOOは「当社はLIBORに代わる金利としてSOFRを重視しており、これは頻繁な取引データが使用されているため」としています。またSOFRを使用する主なリスクとしては、圧倒的な77%が「キャッシュ商品とリスクオフセット型のスワップを合わせるのが困難である」と回答しています。

4. アジア太平洋市場では移行に向けた動きはほとんど見られていません。それはLIBORが海外の指標であり、あまり理解されていないためです。

KPMGが、香港、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールで営業する銀行に対して最近行った調査では、LIBOR廃止に向けた準備はほとんど、あるいはまったくされていませんでした。「影響に関する査定が行われておらず、エクスポージャーが算出されていないほか、システム準備や契約の見直しについても正確な値が出ていないうえ、関わりの深いクライアントに対しても通知が開始されていない」としています。(KPMG2019年11月)しかし香港とシンガポール、同地域の海外支店などではLIBOR廃止に向けた準備もしくはエクスポージャーの算定が若干進んでいるようです。

APAC地域において進捗が遅い最大の理由は、為替金利の管理に向けて必要となる調整について、中央銀行からの指導がないことです。中央銀行および規制当局は、特に同地域の開発途上国においては早急な対処が求められます。こうした市場では貿易の比重が高く、貿易金融と資金調達に際してLIBORを参照する外貨を利用しているためです。

5. 「穴から出る最大の方策は掘るのをやめること」

トム・ウィフARRC会長は、ブルームバーグのコラムの中で、LIBOR廃止と(米国内での)SOFRの採用に向けた移行をできるだけ早く行うべきであると主張した際に上のように述べています。2021年の期限が近付きつつも、多くの人は期限後も金融業界が引き続き自主的にLIBORをサポートし、発行することを信じて(あるいは期待して)います。PIMCOのウィリアム・デ・レオン氏とコートニー・ウォーカー氏によれば、これは危険なシナリオです。「もし既存の貿易が引き続き古いLIBOR指標を使用した場合、二つのマーケットが存在するリスクが生まれ、エンドユーザーに深刻な影響を与えるほか、評価額に懲罰的な影響を与えかねない」LIBOR廃止に向けた準備は限られているものの、地方銀行の会計担当者はSOFRに反対しており、免除を求めています。こうした準備不足は同様に危険で、2021年12月の期限に向けて必要な対策を取ることが難しくなります。 

アジア太平洋の銀行は移行作業に向けた準備が非常に遅れており、金利が変わると知りながらLIBORを使った商品を発行し続けることは自らを法的リスクにさらすことになります。こうした銀行はLIBOR廃止に向けた作業に早急に着手しなければ、法的な問題を抱えたり2021年の期限に間に合わせるためのコストが高まることでしょう。

6. 少なくとも契約を見直し、フォールバック言語の導入に備える必要性。

これまでLIBORは長年にわたり世界中で使用されてきたため、代替金利に移行することは簡単なことではありません。現時点において、もしどうしてもLIBORを参照した新たな契約を作成する必要がある場合には、ARRCが発表したフォールバック言語を採用することを薦める、とトム・ウィフは述べています。これにより「LIBORが利用できなくなった場合に、市場参加者の契約に関するセーフガードとなる」としています。(ブルームバーグ、2019年12月6日) こうした最低限のセーフガードなしにLIBORを使った商品(大量のデリバティブとフォワードを含む)は2021年の期限が近付くにつれて流動性が低くなり、発行者は当事者から長期の高額に上る訴訟を起こされることになりかねません。

LIBORからの移行に際してカギとなるのはフォールバック言語:

  • 資産担保証券市場の関係者は、新しいローンや債権の発行に際し、フォールバック言語を使用することを徹底しています。「これにより従来のLIBOR契約を制限するのです」 

  • ARRCは新たなクローズエンド、変動金利住宅ローン(ARM)に対しての推奨フォールバック言語を発表し、すでにファニーメイとフレディーマックが個人向け住宅ローンのARMを採用しています。

  • ISDAは「LIBORの完全廃止に対応するため、フォールバックを2020年上半期までに導入し、今年末までに完了するよう最大限努力する」と表明しています。

結論

期限まで残すところ2年余りとなり、銀行、銀行会計担当者、リスクプロフェッショナル、税金担当者、LIBOR移行担当者は準備を完了する必要があります。膨大な量の契約見直しや通知、更新に際してフォールバック言語または新たな参照金利が求められます。こうした契約見直しと修正にまつわる動きは、LIBORの廃止に向けた最も重要なステップと言えます。

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Patricia Gatmaitan

パトリシア・ ガトメイタン

パトリシアはイントラリンクスの銀行・証券向け製品マーケティング部ディレクター。債務資本市場ビジネスのコンテンツおよび新規市場開拓戦略を専門とする。イントラリンクスに入社前はグローバル金融サービス企業のEnvestnet,、IHS Markit、モルガンスタンレーでシニア商品マーケティング、コミュニケーションを担当。

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