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2019年のM&Aディールに見られる5つの特徴

2019年はヘルスケア業界の大型ディールからデータ分析の買収に至るまで様々な取引が行われました。いくつかの案件は前例のない規模や予想外の交渉で注目を集めました。そこで昨年に行われた取引のうち、最も興味深い5つの取引に加え、大型IPOをご紹介します。掲載内容は順不同です。

Most interesting 2019 M&A Deals

ブリストル・マイヤーズスクイブ/セルジーン

2019年を象徴するディールとして最も注目を集めたのは、ブリストル・マイヤーズが抗がん剤メーカーのセルジーンを時価総額740億ドルで買収すると発表した案件です。この莫大な金額にも関わらず、ウォールストリートのアナリストの間ではブリストル・マイヤーズにとっての戦略的勝利であると評価されました。この買収により合併後の9つの製品による売上高は10億ドルを超え、ブリストル・マイヤーズの競合のメルクをてこずらせると見込まれたためです。

セールスフォース/Tableau

2019年のディールを語るうえでセールスフォースによるTableauの買収を見逃すことはできません。昨年6月、サンフランシスコを拠点とするセールスフォースはTableauを時価総額157億ドルで買収したうえ、わずか2か月間のうちにディールをクローズさせました。これはこの規模の買収案件においては前例のないスピードです。セールスフォースはM&Aを積極的に進めていましたが、Tableauの買収はこれまでで最大規模の案件として、大企業向け販売をさらに拡大することにつながる可能性があります。

ロンドン証券取引所(LSE)/レフィニティブ

昨年8月、ロンドン証券取引所はデータ分析会社のレフィニティブ社を総額270億ドルで買収すると発表し、一部からは生き残りのための戦略とも呼ばれました。この発表から2か月後には株主の承認を受け、2020年後半にクローズが見込まれています。一部では、データ分析部門を強化することでブルームバーグに対抗するための最後の手段とみられています。というのもここ10年間でLSEが行った大規模な買収案件のほとんどは実を結んでいないからです。ブルームバーグの計算によると、LSEの収益はディール後、データ部門からの収益が70%に達し、現在の40%から増加すると見られています。

CBS/バイアコム

バイアコムはCBSによる買収後、新たな社名に変更されました。この2社は1999年に一度合併が行われたものの、数年後には実質的に合併解消となりました。CBSとバイアコムの統合により同社のテレビシリーズは14万エピソード、映画本数は3,600本に上ります。合併後のバイアコムCBSはマーケットシェアの22%を占め、コムキャストの18%、ディズニーの14%を上回っています。

LVMH/ティファニー

世界有数の大富豪ベルナール・アルノー氏が手掛ける高級ブランドグループLVMHは、昨年11月に高級ジュエラーのティファニーを162億ドルで買収する計画を発表しました。この買収は、ルイ・ヴィトンやセフォラブランドをもつLVMHにとっても最大規模となりました。ティファニーは顧客の志向変化への対応が遅れ、特に中国において苦戦しています。アルノー氏はティファニーをてこ入れすることで、特に北米においてジュエリー小売業界のブランドとしての地位を再興するとの見通しです。

大規模 IPO!

ビヨンド・ミートのIPO

昨年10月にIPOを行ったビヨンド・ミートは、取引初日のパフォーマンスとしては2000年以来最高を記録したことで注目されました。同社は2009年に設立され、IPO価格は一株当たり25ドルで、963万株を売却し、終値はIPOの163%高となる65.75ドルとなりました。このIPOの成功の背景には、肉製品に対するライフスタイルの変化があるとされます。2020年に入り、貿易戦争の脅威や経済的不透明感といった懸念事項はあるものの、上記のようなディールが続く可能性も期待されます。M&Aの専門家によると、ディールメーカーは契約を締結したいと躍起になっていることから、ヘルスケア業界のディールおよび巨大合併の動きが最大化するものと予想しています。

Aiko Suyemoto