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APACマーケットインサイツ2020年上半期 ウェビナーサマリー

コロナウイルスの世界的流行が今後のM&A活動に与える影響についての洞察がウェビナーで共有されました。

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SS&Cイントラリンクスでは2020年3月18日に、APACの公表済みM&A活動やマーケット情報にフォーカスしたウェビナーを初開催しました。
 

このウェビナーではSS&Cイントラリンクスのシニアアナリスト Elizabeth Limが、下記についてお話しました。

  • マーケットインサイツ&アナリシスチームの紹介
  • 地域別(日本・中国/香港・東南アジア・韓国・オーストラリア/ニュージーランド・インド)のディール分析
  • COVID-19のディールメーカーへの影響について
  • Q&A

この記事では、ウェビナーの内容を要約してご紹介したいと思います。

イントラリンクスでは2月に発行した「2020年第2四半期ディールフロープレディクター」において、APACの2020年上半期におけるM&A公表ディール件数は、前年比約6%増加すると予測していました。

ところがCOVID-19により世界の状況は短期間で一変しました。この新しいシナリオにおける十分なデータがないため、残念ながらどの地域においても今後の展望をアップデイトすることはできません。少なくとも2020年上半期に前年比6%の公表ディール件数の増加は今となっては見込めそうにありません。

2019年は日本のアウトバウンドディールにとって記録的な年となり、近年M&A活動に対して海外から厳しい監視を受けていた中国から、最も積極的な買収国の地位を引き継ぎました。テクノロジー、 消費者向け製品・サービス、工業、小売、メディア・エンターテインメントが日本の上位5業種でした。

次に、コロナウイルスの世界的流行が今後のM&A活動に与える影響についての洞察が共有されました。

2020年の年初、APACおよび世界中のディールは非常に有望に見えました。今年の初めに米国と中国の貿易協定のフェーズ1の調印が見られ、フェーズ2で対処すべきいくつかの点はありましたが、貿易と協力の新時代が到来する可能性を感じさせました。日本では今年ヨーロッパや北米などの海外でのM&A活動が増加し、記録的なアウトバウンドの一年となると見込まれていました。また、PEの成長と内部投資も見られました。

そして今、COVID-19の世界的流行により、明らかに世界的にかなりの不確実性が見られるため、ディールがキャンセルされたり保留されるケースが見られるようになりました。また、生産停止や労働者のwork from home/stay at homeポリシーなどによる生産の急激な減少により、世界的なサプライチェーンが影響を受けています。

けれどもファンダメンタルズはまだ健全です。現在COVID-19に対する様々な政策や危機を食い止めるための試みが行われています。ヘルスケアは間違いなく注目すべき業界であり、テクノロジー、金融サービス業界にも注意を払うべきです。

ヘルスケア業界はビジネスの観点だけでなく、政策の観点からも注目すべきセクターです。ヘルスケア業界では昨年、史上最大規模のディール - ブリストル・マイヤーズスクイブによるセルジーンの900億ドルでの買収- を記録しました。そして、セクターの統合につながる理由 - 多くの製薬大手の特許サイクル競争の終わり、そして業界全体に生じる新たな圧力 - があります。

中国ではジャック・マー氏からの何百万ドルもの慈善寄付など、治療法を見つけようとするために多額の資金が投入されることも確認しました。米国では、ビル&メリンダ・ゲイツ財団から1億ドルが寄付されており、世界中にはさらに多くの資金があります。米国で中国だけでなく、日本、ドイツなどのあらゆる場所で、ワクチンの時間との戦いが始まります。

Q&Aセッション抜粋

なぜ、金融セクターを潜在的な機会として選択したのか、その理由を詳しく教えてください。

COVID-19が発生する前、私は、ヘルスケアが2019年に注目すべきセクターであったのと同じように、金融サービスが2020年に注目すべきセクターである可能性があると考え始めていました。リフィニティブ社によると、今年の今までのところ、金融サービスは世界のディールバリューの中で最も大きなシェアを占めています。今回の危機は業界にさらなるプレッシャーを与えることになるでしょう。

上場マーケットの評価水準が急落していることを考えると、ディールバリュエーションはどのように推移すると思われますか?

この数年、平均的なディールサイズは着実に増加しており、ディールメイキングでは、発表されるディール数は少ないが、価格は高いという傾向が見られていたが、今回の危機ではその傾向は止まっているようです。今後は、経済がどれだけ回復するかにかかっていますが、まだ十分なチャンスはありません。

クロスボーダー契約にはどのような影響がありますか?

今のところ、すべてが保留されています。そのため、クロスボーダー取引の交渉は、このような状況の中で非常に現実的な課題となっています。しかし、例えばアジアでは、この地域が地域間の貿易や取引活動の恩恵を受けてきたことは明らかであり、生活が「通常」に戻れば、クロスボーダー活動が重要であり続けることは想像に難くありません。

現在の状況下でデューデリジェンスを管理するためのアドバイスをお願いします。コロナウイルスは、今後のディールメイキングプロセスを変えるような長期的な影響を及ぼすと思いますか(重大な不利益変更条項の使用の拡大など)?

現在の状況下でのデューデリジェンスプロセスを管理するためのアドバイスとしては、時間がかかることを覚悟すべきということです。今、企業はコロナウイルスのような不測の事態が発生した場合、どの当事者が責任を負うのかを明確にしたいと考えています。買い手なのか、ターゲットなのか。また、今後のパンデミックの際には、重大な不利益変更条項や関連規定の利用が増えるでしょう。

現在の状況と予測可能な状況、政府の介入は無限にあるという印象を考えると、政府(ソブリンファンドを含む)による M&A 市場への介入は今後も増えていくと思いますか? 

M&A 市場への介入はあるとすれば、政府の介入よりも市場の力によるものが多いのではないでしょうか。M&A に影響を与える経済への介入における政府の役割については、流動性の注入や業界内の複数企業の救済、財政措置など、政府が唯一の主役であることが明らかになってきています。現在の問題の多くは、企業が自ら行動して解決しようとすることはできませんが、政府はそのような問題を解決しようとしています。

ウェビナー録画ビデオ

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Yuki Iwamoto