ポストコロナ時代の再生可能 エネルギー業界におけるM&Aを予想する

ニコラス・ベンツ氏はパリに拠点を置くAdenfi社の共同創設者で、欧州エネルギー市場のアドバイザーとして豊富な経験を有しています。同氏はコロナ危機後の世界は、現在よりも持続可能な社会になると見ています。


2020/6/18

M&A Renewable Energy

新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックはエネルギー業界に大きな混乱をもたらしました。世界中の人々の健康を危機に晒している新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせるために各国政府がロックダウンや渡航制限を行う中で、石油価格が過去最低レベルに達したことと需要が激減したことは、エネルギー業界にとって2つの大きな痛手となりました。

国際エネルギー機関(IEA)の予想では、2020年にエネルギー業界は6%減少するとしており、今後の石油・ガス業界の動向についての不透明感が圧倒的となっています。再生可能エネルギー市場(太陽光、風力、水力)もコロナ危機のために建設着工の遅れという形での影響を受けてはいるものの、業界全体としてはパンデミックにあるなか持ちこたえています。最近発表されたIEAのレポートでは、2020年に再生可能エネルギーの世界的な使用は1%増加すると予測しています。

今回、再生可能エネルギー市場について深く知るために、グローバルアドバイザリー会社Adenfiの共同創設者であるニコラス・ベンツ氏にお話を伺いました。パリに拠点を置くAdenfiはエネルギー市場に関する戦略的なアドバイスを行っています。ベンツ氏は業務の一環としてM&A取引のバイサイドとセルサイドに従事しています。インタビューでは様々なトピックを取り上げ、今後再生可能エネルギーと持続可能性への注目が高まるとする理由について同氏の意見を伺いました。

SS&Cイントラリンクス:新型コロナウイルスのパンデミックはエネルギー市場、つまり再生可能エネルギーという観点から、御社が専門とする分野に大きな打撃を与えました。OPECとロシア間で価格戦争が起こった結果、原油価格は最低レベルに急落し、これまでで初めてマイナスに転じました。また新型コロナウィルスの蔓延を遅らせるために世界中でロックダウンが行われたことから、エネルギーの需要は歴史的な減少となっています。エネルギー市場の縮小という観点から、これをどうご覧になりますか?

ニコラス・ベンツ:石油価格は電力と同じ影響を受けています。需要が極端に低い状況にありながら生産を削減する能力がないために、価格はマイナスに転じることがあります。政治的には、輸出国間の合意は市場シェアを失うことで帳消しとなってしまいました。

Nicolas Bentz, co-founder, Adenfi

原子力分野の関係者は経済的に受け入れられないと指摘するでしょうが、私たちは、パンデミック期における必要な再生可能エネルギーの生産能力を検討するべきです。さらに人的資源に関して言えば、運用段階よりも開発および建設段階のほうがはるかに重要です。

さらに原子力発電所は、現在の需要の低い状況において、技術的に最小限の環境で稼働しています。長期間にわたって100%の稼働率が保たれていないことは非常に注意が必要です。そして原子力分野に関するリスク要因にパンデミックを加える必要性が出てきます。

M&Aの観点からは、ここ数年で欧州のエネルギー市場の統合が進んでいます。現在のところ、多くのM&A取引がパンデミックのために延期や一時停止となっています。通常のバリュエーションが行われるようになった場合、バイヤー、特に再生可能分野に携わる人たちはポストコロナの状況にどのように対応すると思いますか?

私たちはM&A取引が止まることはなかったと見ています。新型コロナウイルスのためにそのプロセスが長引いただけです。具体的には組織的なタスク(自宅勤務への移行、対面会議の削減など)で時間を要しました。パンデミック以前にはバリュエーションが高いと見積もられていましたが、統合レベルにある現在では、機会の少なさがバリュエーション価格を決定する要因となるでしょう。

エネルギー会社は売り上げが減少するとみているほか、需要減と低価格に悩まされています。これは投資家にとって問題のある資産を買収できる機会だと思いますか?あるいはその評価を行うのは時期尚早だと思われますか?エネルギー市場において統合が復活することは避けられないことでしょうか?

すべての石油・ガス会社は原油価格の低さによる影響を受けており、特に従来の石油生産者で、損益分岐点が50-70米ドルレベルの会社はないでしょう。再生可能エネルギー分野はこれまで影響を受けておらず、これは保証と十分なレベルの収益のあるメリットオーダーとPPA(電力購入契約)固定価格によるためです。国際エネルギー機関は2020年の需要減少を発表しているものの、再生可能エネルギーの生産は5%の減少となっています(風力タービンの12%と太陽光の16%を含む)。再生可能エネルギーの生産者はパンデミックによる建設とプロジェクト許可の遅れという影響を被っているものの、現在ではほとんど解決しています。私たちはエネルギー業界における統合の傾向は続くと見ていますが、市場は限られています。

業界をリードする石油生産者は再生可能エネルギーと低炭素事業への投資を増やす取り決めを行っています。再生可能エネルギー業界全体に対するパンデミックの影響をどのように見ていますか?資金調達は難しくなると思いますか?政府は刺激策および再生策あるいはESG(環境、社会、ガバナンス)投資の一環として、同セクターの成長と革新に向けた奨励を行うと思いますか?あるいは優先順位を下げると思いますか?

フランスの政策を考えた場合、ロックダウン中にPPEが公開され、再生可能エネルギー市場の展開における新たな目標が示され、欧州グリーンディールはまだ進行中と言えます。ESG投資への圧力は現実として金融セクターに存在し、石油の低価格は新たな方向性を生み出していません。再生可能セクターは依然としてマーケットと政府から支えられ優先事項とされています。資金調達先を見つけて融資を行うことは常に困難を伴うものですが、重大な問題があるとは思いません。しかしながら、量的緩和が高い水準で行われることで銀行の借り換えが以前よりも潜在的に高くなる可能性があります。結果として、金利は2019年および2020年パンデミック前の低金利よりも高くなるでしょう。

現在の状況は流動的ですが、将来についてすでに慎重に考えていると思います。ロックダウンが緩和され、欧州全体を通じて各国が徐々に国境を開き始めている中で、石油、石炭、ガス、原子力、再生可能エネルギーの需要は高まることでしょう。エネルギー業界に関して今後6カ月から12カ月にわたって最も考えられるシナリオはどのようなものでしょうか?最も大きく変化する地域はどこになると思いますか?

将来のマーケットに関する差金決済取引(CFD)を見る限りでは、ほとんどの国においてロックダウンが終わるころまでには需要が少しずつ上昇することでしょう。WTIの2020年原油先物市場12月限は35米ドルで、2027年以降に50米ドルまで戻るとしています。金利曲線は2026年以降にプラスに戻るでしょう。私たちは失業率に注目する必要があります。GDPは第二四半期に経済不況となるかもしれません。多くの業界が生産を削減するでしょう。エネルギーの需要は経済成長に関連しますが、予測するのは困難で、多くの国がこれだけの高い負債を抱える状況においてはなおさらです。2008年の経済危機後、アメリカは5大IT企業GAFAMに助けられていました。欧州ではドイツが産業に支えられていたものの、イタリア、スペイン、ギリシャは高い負債レベルと強力なイノベーションがないために追い詰められる状況でした。

Wärtsiläエネルギー転換ラボ(Energy Transition Lab)の最近のレポートによると、イギリス、スペイン、ドイツにおける再生可能エネルギーの発電レベルはコロナ危機以前と同じレベルであるとしています。欧州ではビジネスが再開しつつあるなかで、コロナ危機後の世界における企業戦略はどのようにシフトしていくでしょうか。エネルギーセクターへの投資に影響を与えるものは何ですか?

コロナ危機後の世界は、現在よりも持続可能な社会になると私たちは信じています。2010年から2020年までの10年間は再生可能エネルギーが展開された時期でした。しかし2020年から2030年までの10年は再生可能エネルギーが統合され、水素エネルギーが開発されると予想します。クリーンモビリティが今後の課題となるでしょう。



Romain Lopez Intralinks

ロマン ロペス

ロマン・ロペスはフランスのアドバイザリーチームのマネージャーで金融アドバイザー、法律事務所、プライベートエクイティ投資家とのコミュニケーションを担当する。イントラリンクスにはセールスエンジニアとして5年前に入社。前職では3年間にわたり製薬会社およびエネルギー業界を専門として主要顧客を担当。グルノーブルビジネススクールにおいて修士号を取得したほか、ESSECのアントレプレナーシップ修士号を取得している。

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