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Insurtech(インシュアテック)革命を方向付けるM&Aディールメイキング

業界にディスラプションをもたらすスタートアップ企業が相次いで出現していることで、テクノロジーに注力した斬新な保険商品が市場に出回っています。従来からの大手企業はこの現象に注目しています。資本と規制における課題とともに、新型コロナパンデミックによって生じる不確実性が高まる中、来年は戦略的M&Aが急増するのでしょうか?

M&A_Insurtech-Intralinks

保険業界は最も古くから存在する金融業のひとつです。保険業は世界のどこにでも存在しますが、非効率的という課題があり進化も遅いため、崩壊の機会が生じています。初期段階にあるインシュアテック業界は、革新的なテクノロジーベースのソリューションを活用しようとしています。

Investopediaは、インシュアテックを「現在の保険業界モデルから節約と効率性を絞り出すために設計された技術革新の活用」と定義しています。インシュアテックは2010年頃にフィンテックの分派として出現し、以来、保険業界に揺さぶりをかけています。カスタマーエクスペリエンスの向上でも、リスク評価とデータ管理の合理化でも、保険業界のリーダーたちは注目し、競争力を維持して優位に立つために各々の戦略を調整しています。

この世界的な新興業界では、2020年第2四半期(4-6月期)に74件のディールで15億6000万米ドルの強力な投資が見られました。7月には、ニューヨークを拠点とし、ミレニアル世代などの若年成人層を対象とするデジタルファーストの損害保険インシュアテック会社、Lemonadeがこの業種として最初の株式を公開し、保険業界全体で注目を集めました。カリフォルニア州パロアルトを拠点とするユニコーン企業のHippo Insuranceは、今年初めに1億5,000万米ドルを調達し、オハイオ州コロンバスを拠点とする Root Insuranceは2019年にシリーズAラウンドで3億5,000万米ドルを調達しました。総じて、2019年は73億米ドル相当に上る548件のディールが取引されました。7月2日にLemonadeが行ったように、多くのインシュアテック企業がIPOを行う可能性はまだ低いですが、多くの企業はポートフォリオと商品を補完していると自覚する確立された企業と合併する道を見出すと思われます。

大手保険会社はこれまで、M&Aを非常に競争の激しい業界で成長するために不可欠な戦略と見なしてきました。逆に小規模な保険会社は、M&Aを、そこに価値を認める大手企業と提携する手段として活用しています。

現在、大手保険会社は、この新しい技術的進歩の波と、戦略的取引の機会として事業を進めるためのより簡素化された方法に対する需要を目の当たりにしています。これにより、企業は自らの分野で競争力を維持できるだけでなく、新しい最先端テクノロジーを高度に制御しながら、既存のサービスに追加することもできます。

減速を促すもの

新型コロナの感染拡大は保険業界に多くの新たな障害をもたらしました。多くの企業は、市場の不確実性のために取り組んでいた取引を一時停止しました。新たなリモートによるデューデリジェンスプロセスに関しても、オンサイトでプロセスを行っていた企業においてさまざまな課題が生じています。ディールチームが共同作業を行う方法が完全に変更されたため、オンライン会議や雑然とした受信トレイにより、ディールチームは「ニューノーマル」に適応せざるを得なくなりました。パンデミックによって増大した課題に加えて、最近の経済状況と結果が待たれる米国大統領選挙もまた、多くの保険会社の戦略と合併・買収(M&A)意欲を推進する要因にもなっています。新型コロナの結果として多くの保険会社が直面しているもう一つの課題は、保険請求をオンラインで提出し管理するためのより迅速かつ簡単な取引と効率的な方法に対する顧客のニーズの変化に適応する必要があることです。

今回のパンデミックにより、デジタル時代に顧客ベースにサービスを提供する準備ができていなかった多くの企業の弱点が露呈されました。これは、新型コロナ感染症によって生じる課題に対処する必要性が高まるにつれて、インシュアテック企業にかなりの機会を生み出しています。スピード、効率性、簡素化、アクセスのしやすさがこれまで以上に重要になっています。テクノロジーを活用することで、企業は、顧客のニーズを満たすための改善された効率性と、内部プロセスを合理化し現在のサービス提供方法を微調整するための機能を独自に組み合わせることができます。顧客はテクノロジーやデジタルプラットフォームを利用することで安心感を得始めています。むしろ、このパンデミックは、新しい顧客の需要を満たすための技術的進歩に対する保険業界のニーズの上昇軌道を加速しているのです。

今後の課題と機会

インシュアテックの新興企業が現在直面しているであろう主な課題は、まさに生き残りです。これは有数の大手保険会社にとって、インシュアテック企業を買収し、互恵的なパートナーシップを生み出す機会をもたらします。インシュアテック業界ではパートナーシップが非常に重要です。そこには独自のテクノロジーで付加できる価値があるため、大企業はインシュアテック企業とのパートナーシップを望んでいます。買収は通常、小規模な保険会社のポートフォリオが大規模な保険会社のポートフォリオと適切に融合または適合し、成長の原動力として見なされる場合に生じます。

インシュアテック企業が成長するために直面する課題はこれだけではありません。彼らは、高度に規制され精査された業界のナビゲートや合併後の統合も任されます。システムの統合を成功させ、これらの企業が主要な利害関係者に迅速に価値を提供できるようにすることが重要です。

それでも、今年の10-12月期と2021年に向けてインシュアテック業界の見通しは楽観的です。多くの業界リーダーがM&Aディール活動に顕著な回復が見られると予測しているのです。今後12か月において、大手保険会社は、買収をセキュリティと長期的な存続の機会と見なしているため、M&Aを活用するのに良い位置につけています。

イントラリンクス、ティム・マイリー