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AIマスキング機能がディールの成否を左右する

個人情報(PII)保護に議論の余地がない5つの銀行シナリオ。

AIマスキング機能 イントラリンクス

バンカーと資本市場の専門家たちは、複数の課題に直面しています。業務の透明性を確保しながら、個人情報保護法を遵守し、機密情報を保護し、絶えず変化する規制環境に注意を払う必要があります。これらはすべて、ディールを実行し、ディール関係者の要件を満たし、クライアントに代わって業務を遂行しながら行われます。

これらはバランスを取ることが困難です。幸いなことに、仮想データルーム(VDR)などのテクノロジーは、バンカーやディールメーカーがディールを効率的かつ安全に処理するのに役立ちます。最も優れたWebベースVDRには付加価値機能が含まれており、ますます限られるデューデリジェンスにかけるタイムラインをさらに高速に処理し、シームレスなコラボレーションを実現します。

バンカーがVDRで必要とする最も重要な機能の1つは、人工知能 (AI) によるマスキングです。AIマスキング機能により、数千ページを迅速かつ綿密に精査し、コンテンツをインテリジェントに特定・選択して表示をマスキングしながら、そのドキュメントの他の部分へアクセスすることができます。変化が早い市場では、AIマスキング機能によって手作業の時間を大幅に削減できるため、リスクを大きく低減し、チームのメンバーをより高いレベルのタスクに集中させることができます。

イントラリンクスのコミュニティの皆様がAIリダクションのメリットをより深く理解できるようにするために、AIマスキング機能を組み込んだVDRがバンカーやディーラーに大きなメリットをもたらす5つの重要なシナリオのリストをまとめました。

1.ローンポートフォリオ売却

多くの場合、銀行やその他の貸し手は、不良債権などのローンポートフォリオを売却する必要があります。ビジネス上での機密性および第三者のプライバシー権に配慮するため、ローン販売契約および譲渡証書内の情報をマスキングすることが重要です。裏付けとなる取引情報、名前、社会保障番号または国民ID番号、口座詳細など、裏付けとなるローンに関連する個人情報(PII)が表示されないようにしなければなりません。そうしなければ、これらの情報が侵害されたり、悪用されたりするリスクが生じます。

しかし、広範囲にマスキングすれば司法による審査の対象となる可能性があり、買い手と売り手はマスキングの実施・不実施について議論する場合があります。一般的に、マスキングされた情報は無関係かつ機密でなければなりませんが、この基準であっても議論の余地が生じます。つまり、ローンポートフォリオの売り手は、審査とマスキングに慎重なアプローチを取る必要があります。あるいは、訴訟やその他の法的障壁を回避するために、必要に応じて迅速に審査、マスキングの実施・不実施を行うことができるようにする必要があります。

2. 債務の回収

ローンの有効期間を通じて、借り手に関する大量の機密情報が、貸し手またはローンを管理する組織に介在する法人に対して不必要に公開される可能性があります。したがって、マスキングが不可欠となります。

複数の規制で、債務不履行や破産に関する顧客情報のマスキングが求められています。たとえば、公正債権回収慣行法(FDCPA)では、デビットカード番号、クレジットカード番号、有効期限、CVVコード、PIN番号、口座番号、ルーティング番号、社会保障番号の下4桁、郵送先住所の数値部分、郵便番号、生年月日、残高、支払額、決済申込書、電話番号をマスキングすることが規定されています。

同様に、連邦破産手続規則第9037条は、個人が破産を申請したときに、PDF、ワード、スプレッドシートなどのすべての形式のドキュメントを保護できるように、口座番号、税識別番号、社会保障番号などの顧客情報または「個人データ識別子」を保護することを銀行に求めています。これらは訴訟手続きを進めるためのものです。

3. ストラクチャードファイナンスと証券化

複数の資産やローンをプールし利付投資ビークルとして再パッケージすると、そこに含まれるセンシティブなPIIの量は指数関数的に増加します。ストラクチャードファイナンスでも、透明性とPII保護のバランスを取る必要があります。(金融危機により発生した資産担保証券における悪用を阻止するために取り入れられた) 金融規制改革法(ドッド・フランク法)の第942項(社会保障番号、氏名、住所など)では、SEC EDGARデータベースで情報が公開されるときには、個々の債務者を一意に識別する情報を編集し、具体的なデータ値を広い範囲に置き換えることが推奨されます。

米国以外では、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)が提唱する枠組みでは、投資家はデューデリジェンスおよび信用リスク評価を行う前に、流動性ファシリティおよび与信サポートの条件に関する全ての情報にアクセスし、元となるディールのセンシティブ情報を整理する必要があると勧告しています。

4. IPO

新規株式公開(IPO)に着手するバンカーやディールメーカーにとって、このプロセスはさらに厄介なものになる可能性があります。非公開の製品やサービスに関する情報が競合他社の手に渡るのを防ぐためにはマスキングが必要ですが、潜在的投資家はバリュエーションや株価評価ができるように完全な透明性を要求するはずです。IPOを控えている企業は何に取り組むべきでしょうか?

この場合、迅速にマスキングしたり、あるいはマスキングを行わないようにする機能が重要になります。発行人は、競争上の損害から自らを保護するために、マスキング可能な情報(すなわち、価格設定条件、企業秘密、購入要件)に関するSECガイダンスに従うことを選択し、主要な投資家がディールから手を引く恐れがある場合には、マスキングを取り消すことができます。発行人は、マスキングの過不足それぞれの是非を検討しつつ、この機能により変化するニーズと優先事項に対応する柔軟性とスピードを確保することができます。

5.その他の戦略的ファイナンス(M&A等

マスキングは、アドバイザリー、リストラクチャリング、合併、買収など、多くの投資銀行機能に必要な作業であり、そのほとんどすべてで契約の精査が必要です。インベストメントバンカーやディールチームは、米国SEC、欧州ESMA、その他の関係当局への必要書類の提出にも留意しなければなりません。銀行は多くの場合、これらの目的のためにバックオフィスやオフショアチームを設置しています。これは、物理的な資本や人的資源だけでなく、プロセスのエラーや遅延に起因する財務および評判に対する結果の観点からも、高コストな投資になる可能性があります。デジタルと手動を組み合わせたハイブリッドマスキングプロセスが導入されている場合でも、特に後になって内容の精査、校正、マスキングの取り消しが必要になったときには、手に負えず、混乱し、繰り返しの作業が発生する可能性があります。

結論

マスキングのプロセスは、ディールの成功に不可欠です。手動でマスキングを行えば、面倒で繰り返しが多い作業が必要となり、時間とリソースを消費します。それに加えて、マスキングの誤用や濫用によって、財政または評判に深刻な結果がもたらされる可能性もあります。幸いなことに、バンカーや資本市場の専門家は、マスキングプロセスに人工知能を自動化して組み込むテクノロジーソリューションの恩恵をすぐに受けることができます。これらのソシューションが、ディールのデューデリジェンスに必要な安全が確保された仮想データルームに統合されている場合はなおさらです。 

Patricia Gatmaitan